夢がここから始まるよ。アニメラブライブ !虹ヶ咲 後半感想(3rdライブを見る前に)
以前、所謂個人回(1〜9話)を視聴した感想を書いたので長らく放置していた残りの感想を書き残しておきます。3rdライブを見たらまた気持ちが変わってしまうので今のうちに。
何故、放置していたのかといえば明確な答えがあり、12話の展開が腑に落ちなかったことに尽きます。
10話、ラブライブシリーズでは鉄板の合宿回。
同好会の10人が姦しく合宿を楽しむ内容で1クールの中では箸休めの回です。
とはいえ、10人目である侑のピアノの上達を描き、ラブライブ大会出場に代わる同好会全体の目標としてスクールアイドルフェスティバルを発案する描写は、個人回で発散した物語が侑を中心として収束に向かう展開を予期させます。
1話以来侑に強くスポットの当たった回と言っても差し支えないでしょう。
侑がスクールアイドルに出会い、変化が如実に表れるようになった事で、歩夢から侑への違和感も濃く描かれており今後何かあるんだろうと思わせるのもいい匂わせです。侑の水着はダサいけど。
11話。リアルタイムで見て怖くなった回です。
大筋としてはスクールアイドルフェスティバルの実現に向け、侑や同好会が(お台場を)東奔西走する回。個人回で出てきたスポットが再び出てくるのが彼女達の生活圏を表現していて良いですね。
フェスに向けてそれぞれが前向きに行動する中、これまでの以上に露骨に描かれる歩夢から侑への憂いの込められた目線。これで何も起きないはずはなく...。
遂に、と言うべきか、感情の爆発した歩夢が侑を押し倒してしまうシーンでこの回は幕を閉じる。
忌避されるかもしれないような危うい感情をここまで鮮烈に描くのか、と唖然としました。
「私の夢を一緒に見てくれるって約束したよね」
「侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい」
「私だけの侑ちゃんでいて」
1話のラストで感動的に伝えていた「私の夢を一緒に見てくれる?」という問いかけの真の意味がどれ程恐ろしいものなのかとハッとさせられました。
可愛いものが好きで、でもそれを1人で表現するのはこそばゆいからスクールアイドルとして頑張る私を応援してね。1話時点ではその位の意味合いに捉えていました。しかし、歩夢にとっては一世一代の告白レベルの宣言だったのです。
歩夢というキャラクターの重さを誤解していたと痛感する11話でした。
さて、ここからどう決着をつけるのか!?と期待が高まる一方でした。12話を見終わるまでは...。
12話アバンでは、衝撃的な事件があったにも関わらず、自然と腕を絡ませてくる歩夢に恐怖します。
侑と歩夢がすれ違っていようが、フェスに向けて準備は着々と進む様子が描かれます。しかし、2人の間のわだかまりは解けません。
侑が夢について語ろうとするのを拒絶する歩夢。
ずっと寄り添ってきた幼馴染だからこそ、スクールアイドルに出会ってからの侑の変化、そして2人の関係の変化に耐えられないのだろうと予想できます。
そんな変わりゆく今、未知の未来を恐れる歩夢を強調するように、他の8人が順調なフェスの準備も歩夢だけは進まない。
しかし、せつ菜からアドバイスを貰い、変化に対して前向きになった歩夢がファンや侑の力を借りてステージを完成させ、1話と同じマンション前の階段で2曲目を歌うという流れ。イイハナシダナー。
個人の感想としては、後半の展開は期待未満でした。もっとドロドロした話になるのかと思いきや、侑本人が歩夢の問題の解決に苦慮しなかったことで期待外れの印象を受けました。
歩夢が侑の変化に対して否定的だったのは、歩夢にとって元々侑1人だけを指していた"大切なもの"にその他のファンが加わるようになり、その変化を誰よりも歩夢自身が恐れていたからだと物語からは読み取れます。
歩夢は「侑と歩夢」の2人の世界を何よりも大切にしているからこそ、その世界を脅かす存在に敏感なのでしょう。
それは一塊の女子高生である歩夢にとっては、彼女の生き様といっても過言ではないはずです。
しかし私がこの展開に納得できなかったのは、せつ菜の「始まったのなら貫くのみです!」という言葉が歩夢の認識を変えるほどの説得力があるとは感じませんでした。(例えば、ここで1話のリフレイン的にChase!が流れて歩夢が回想するような演出があれば納得できたかも?)
前に進む程、見える世界が広がるほど大切なものが増えていくのも、普遍的な話です。
歩夢にとっての世界が「私と侑ちゃん」から「私と侑ちゃんと私を応援してくれる人と...」に変わったのであれば喜ばしい事です。でも、その世界を変えるのはせつ菜ではなく侑であってほしかった。
11話の引きで問題になっていたのは「あなたと私」であったはずなのに、その解決の手口が第三者の一言、それも以前の話数では恋敵の様に扱っていた相手の言葉では、私個人としては満足のいかない展開でした。
最終話、放送当時は12話の感想を引きずってマイナス寄りに視聴していましたが、今見ると少し見え方が変わります。
この回も雑なカップリング要素やアクシデントの陳腐さなど決して良いとは言えませんが、1クールのアニメを通したメッセージは存分に伝えられていたと思います。
侑と歩夢がスクールアイドルと出会い、トキメキを感じた1話。
同好会の各個人の抱えた悩みや問題に向き合い、その末にソロのステージをやりきった2〜9話。
侑発案のスクールアイドルフェスティバル開催に向け準備し、並行して歩夢の憂いを昇華させた10〜12話。
そして13話ではフェスを通じてアイドルとそのステージを楽しむファンを描き、最後の9人揃ったステージでは侑(視聴者の分身)を一般モブキャラクターのファンと同じ観客席に据え、「あなたへの感謝を伝える歌」「あなたの夢を応援する歌」が披露されます。
そして、侑が音楽科への転入試験を受ける場面で物語は幕を閉じます。彼女の見つけた夢への一歩を踏み出すシーンで。
詰まるところ、この物語は同好会の10人を通して「夢」を描いていたのです。
EDテーマも1話の時点から「夢が見たいんだ」と歌っていました。
自己実現なんて口にするのも気恥ずかしいものですが、このアニメが、9人のスクールアイドルが、画面の前の「あなた」に勇気を与えられたら、きっとそれ以上に素晴らしい事なんてないのです。
このアニメは決して万人が100点を付けるようなアニメではありませんでした。それでも、最後まで見て良かった、元気を貰えたアニメであった事は間違いありませんでした。
「ラブライブ!」という作品が築いた地位に胡座をかくような事のないメッセージ性ある作品を作ってくださった制作陣に感謝の気持ちでいっぱいです。
明日のライブも、楽しみにしています。